小型ビニールハウスで農業実験するブログ。

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キュウリの断根片葉切断接ぎについて。

今回取り上げるのは、近年ウリ科野菜で増えているであろう、断根片葉切断接ぎについてです。

この方法は、接いだ後の管理が断根挿し接ぎと同様なのですが、(一般的に)より作業スピードが早く、シンプルな作業内容な為、ロボット接木にも適性がある。

専用チューブの普及もあり、パート等の教育も容易で作業者による品質のバラつきが少ない、と言った利点があり、苗生産業者でも採用例が多いとの事。


勿論、苗を直生産するキュウリ農家でも、呼び接ぎで数をこなす事が厳しい場合は、この方法に乗り換える例もあります。

また、初心者が初めて挑戦する接木方法として有力な選択肢かもしれません。


それでは、ザックリと手順を見ていきましょう。

まずは、台木から。


台木は断根挿し接ぎ程、穂木に対して胚軸径を太くする必要がないので、穂木と同日播種の人も多いようです。

ただ、台木は空洞が小さい段階が理想なので、接木のタイミングが遅れないようにしたいものです。



断根片葉切断接ぎは、その名の通り台木の地上部を切り取り、子葉の片方と台芽を同時に、切断面を斜め(やや鋭角)に切り落とします。


次に、穂木の胚軸も、台木の切断面と同等の角度で斜めに切断します。



ちなみに、斜めに切断した接合部の精度が良ければ(高確率で)活着するので、胚軸を切断する向きは好みで構いません。


成形が済んだ台木と穂木は、クリップや専用チューブを利用し、切断面を密着→固定します。




筆者は写真のように、台木の子葉と穂木の子葉が90度、穂木の本葉(1枚目)の展開する方向が台木の子葉の反対側、と言う拘りがありますが。

これは最初にチューブで接いだ際の説明書を参考にしていますが、生粋のクリップ党の人は台木の子葉と穂木の子葉が平行にする例が多い印象です。

結局、定植苗に仕上がった時の外観が若干違うくらいで生育等の違いはありません。

作業しやすい方で接ぎましょう。


話は変わりますが、断根片葉切断接ぎでクリップを使用する場合、意外と「慣れ」が必要であり、初心者は専用チューブの方が良いかもしれません。



そして、筆者の技術的な問題もあると思うのですが、クリップを使用した場合は接合部の仕上がりが汚くなる場合が多いです。

その点、専用チューブは比較的綺麗な仕上がりになる傾向があるので、予算が許せば迷わずチューブを使いたいところですね。


さて、活着した後の断根片葉切断接ぎ苗ですが、呼び接ぎに比べるとかなりコンパクトで、台木の子葉1枚の重さを実感しますね。




一説には、台木の子葉が1枚か?、2枚か?の違いで生育に差が出るらしく、収穫の開始が1週間変わってくるそうです。

単純に葉が1枚、ではなく、その時点の台木の場合は体半分に近い、と見ているのですね。




こちらは同じタイミングで播種〜接木をした断根片葉切断接ぎ(左)と、断根挿し接ぎ(右)の苗。

少しだけ生育に差が出ているように思えますが、実際に(同条件で)最後まで比較した事はないので、定植後の初期生育や総収量がどれだけ変わるか興味深いですね。